ショート落語 『親子酒』

お酒をめぐる親子のバカ話

酒は百薬の長と申しますが命をけずるカンナとも言いまして。ほどほどがええようです。私もいつも思うんです。そろそろほどほどやなと。もうやめとこと。ゆうてるときにもう一軒いこうよとか。私の唯一の長所が頼まれたら断れないとこで。そうでっか、ほなもう一軒と。これがもう一軒もう一軒。気がついたら一人で飲み歩いてて。ずいぶんと失敗も多く、去年の年末もごちゃごちゃとまあ。酔っぱらってフィリピンパブ行ったんですわ。そしたらそこに佐久間先生ゆうて業界の大先輩がおられ。「篠原先生もこういうとこに来られるんですか?」とかって、お前もや。あんときはインド料理店でネパールのククリラムを大量に飲んで、洒落でフィリピンパブにワイズマートで買い占めたフィリピンバナナをぶら下げて行ったんですが。歩いてるうちに左右天地がひっくり返ってぐるぐるまわって。バナナぶら下げた猿回しみたいになって。


ほどほどにしたくはあるがこの酒を 飲まずに死ぬは心残りか

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「ただいま~」

「お義父さん、またこんな酔っぱらって」

「倅はまだ帰ってへんのか。毎晩毎晩酒ばっかり飲み腐って。ひっく。年いたもんはしゃあないとして若いもんが酒ばっかりくらいやがって。今日という今日は夜とともに説教しますぞ。夜とともに…ぐ~」

「ちゃちゃ~ん、ちゃん。あいたっ!こら、気ィつけて歩けアホ!あ、ポストか。ポストにぶつかったんや。あんたもえらい酔うてまんな。顔が赤いでっせ」

「ただいま戻ったでぇ!あ!親父、また酒飲んで寝てけつかるな。年いたもんが酒ばっかりくろて。若いもんはしゃあないとして。こら。親父。起きろ」

「いたたたた。誰や鼻をつまむんは。あ!倅やな!毎晩毎晩、酒ばっかり飲みやがって。見てみィ。酒の毒がまわって顔が3つも4つもあるぞ。そんな化け物にこの家は継がせるか!」

「いらんわい、こんなぐるぐるぐるぐるまわる家」
 

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