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ショート落語 『粗忽夫婦』(『粗忽の使者』の改作)
夫も夫なら妻も妻
「あんたなにゴロゴロしてんのん?」
「日曜ぐらいええやないか」
「あたしは掃除や洗濯で忙しいねん。買い物ぐらい行ってきたらどないや」
「どこで?」
「どこでてスーパーに決まってるやん」
「まねきの湯?」
「それは船堀のスーパー銭湯や。買い物いくのに風呂はいってどうすんねん」
「まねきねこ?」
「それはカラオケ!」
「じゃあどこ行くねん」
「駅前のスーパーや」
「ほな行ってくるわ」
「ふらふら寄り道せんと買うもんこうたらさっさと帰ってくるねんで!」
―――
「え~っと。なに買うんやっけな?」
「いらっしゃいませ~」
「あの~すいません」
「なんでしょう?」
「わたし何を買いにきたんでしょう?」
「は?」
「どうも子どものころから物忘れがはげしいんで」
「それは困りましたね」
「お尻の穴に野菜を突っ込んでもらうと思い出すんですけど」
「売りものですから」
「そない言わんとたのんますわ。ちゃんとこうて帰らなよめはんに怒られますねん」
「ちょっと待ってくださいね。店長と相談してきます」
―――
「わたし店長の小林です。ご来店ありがとうございます」
「で、野菜をお尻に突っ込んでもらえますか?」
「もちろんですとも。わたしはそういうの大好きで」
「けったいな店長やな」
「じゃ、まずゴボウからいきましょうか…どうです?」
「ちっとも思い出せん」
「じゃ、ニンジンで」
「あきまへんな」
「よぉし、こうなったらダイコンでどうです?」
「ちっとも思い出せん」
「困りましたな。スイカじゃダメですか?」
「野菜じゃないとあきまへんねん」
「店長、カボチャはどうです?」
「カボチャか、そりゃいいな」
「じゃ、入れますよ!せえの!」
「んっ!うぐっ!もっと奥まで」
「もっと奥までですか?」
「もうちょっとで思い出す。奥まで全部いれて」
「あっ!!!」
「思い出しましたか?」
「思い出した!」
「買いたいものはなんです?」
「聞くのを忘れてきた」