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改作落語『和楽苑の花見』
とりあええず台本完成
稽古用の見台を隅に追いやって仕事をしています。ここがジャパライフの本社です。
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『和楽苑の花見』
喜六「雨あがったな」
清八「ええ天気やな」
喜六「こんなんやったら仕事いくんやったな」
清八「しかし見てみィ。桜が満開や」
喜六「ほんまやなあ。みんなぞろぞろ出掛けてるけど、どこ行くんやろな」
清八「花見にでも行くんちゃうか」
喜六「花見てなに?」
清八「桜の花みて一杯呑むんや」
喜六「そらええご身分やなあ」
清八「わしらも和楽苑のみなさん連れて花見にいこか」
喜六「そらええなあ」
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ということで、喜六、清八の二人連れ、和楽苑のみなさんをお連れして上野のお山にやってきました。
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鈴木のじいさん「きれいな桜じゃなあ、ばあさん」
田村のばあさん「ほんとじゃねえ」
鈴木のじいさん「しかしもっときれいなのはばあさんじゃ」
田村のばあさん「あらいやだ、おじいさんたら」
和楽苑のボランティア担当の釜島さん「もしもし?私は和楽苑のボランティア担当の釜島です。おじいちゃん、おばあちゃん、苑内恋愛は禁止ですよ」
岡本のじいさん「いいじゃねえかよォ。あいつら愛し合ってるんだ」
山本のばあさん「そうだよう。いくつなんじゅうになっても恋愛の自由はあるわよ」
釜島「そりゃそうかもしれませんけど、ほどほどにしてくださいね」
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岡本のじいさん「どこの桜の木の下で呑む?」
山本のばあさん「あの大きな桜の木の下だけ人がいませんね」
安田のじいさん「よっしゃ。わしがちょっと見てきたる」
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岡本のじいさん「どうじゃった?」
安田のじいさん「シルバーシートって書いてあったわ」
岡本のじいさん「他になんか書いてなかったか?」
安田のじいさん「和楽苑様って書いてあったわ」
釜島「これは喜六、清八のお二人が用意してくれたんですよ」
清八「そうでんねん。気がききまっしゃろ」
喜六「あっ!しもた!」
清八「どないしてん」
喜六「毛氈もってくるの忘れた」
清八「何をしてんねんな」
安田のじいさん「大丈夫じゃ。そこに狸のじいさんがおる」
上田のばあさん「狸のじいさんをどうするんじゃね?」
安田のじいさん「狸のじいさんに寝転んでもろて毛氈の代わりにするんじゃ」
岡本のじいさん「どういうことじゃ?」
安田のじいさん「狸のなんとか八畳敷っちゅうじゃろが」
岡本のじいさん「なるほど。そういうことか」
安田のじいさん「ところで狸のじいさん、おまはんの股の下にあるもん、きれいだっしゃろな」
狸のじいさん「昨日、介護士さんに洗ってもらったばっかりじゃ」
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さあ、みなさん、狸のじいさんのなんとかに座ります。
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安田のじいさん「酒や酒や!酒もてこい!」
鈴木のじいさん「酒なくて何の己が桜かな」
田村のばあさん「花よりお酒」
釜島「おじいちゃん、おばあちゃん、お年寄りにお酒は体に毒です」
安田のじいさん「じゃあ、何を飲ませてくれるんじゃい」
釜島「お番茶をたくさん用意してますんで煎じて飲みましょう」
鈴木のじいさん「食いもんはどうするんじゃ?」
釜島「もう忘れたんですか?今日は持ち寄り散財ということで銘々あるものを持ってきてくださいって言ってあったでしょう」
岡本のじいさん「わしゃ朝食のバナナの食べさし三分の一じゃ」
釜島「朝食は残さず食べましょう」
山本のばあさん「あたしゃタクアンを持ってきたよ」
岡本のじいさん「よっ!田村のおばあちゃん、気がきいてるねえ。ちょっとかじらせてくれんか……いてっ!歯が折れた!」
鈴木のじいさん「あんた、歯なんかないじゃねえか」
岡本のじいさん「いって~。これ、子どもが遊ぶ積み木じゃねえか」
山本のばあさん「それはね、こないだ孫が遊びにきたときに忘れて帰ったの。タクアンに似てるからいいかな~って」
アニマルボイスのじいさん「積み木は食べらりゃせんて。たーけらしーていかんわ。わしの持ってきたのは海老ふりゃあの食いさしと味噌カツの食べさしだがや」
岡本のじいさん「みんな食べさしじゃねーかよー」
安田のじいさん「わしは尾頭付きじゃい!」
岡本のじいさん「ヨッ!和楽苑の大将、安田のじいさん、尾頭付きとは威勢がいいねえ」
安田のじいさん「ちょっと待ってや。いま出すさかい」
岡本のじいさん「おいおい。尾頭付きが袖口から出てくるぞ」
安田のじいさん「バラバラバラ~っと。これでどうじゃい!」
岡本のじいさん「これはちりめんじゃこじゃねえか」
安田のじいさん「何匹おるかお前らで数えろ」
岡本のじいさん「偉そうに尾頭付きとかぬかしやがって。鯛でも出てくるのかと思うじゃねえか」
田中のばあさん「まあいいじゃないかい。みんなで仲良く分け合って食べましょ」
岡本のじいさん「田中のばあさんはいつもやさしいこと言うのう」
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まあ、持ち寄り散財と申しましても、実は和楽苑さんの趣向でして、他に料理はちゃあんと用意しております。みなさんおいしく召し上がりながら番茶を飲んでおります。
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篠原のじいさん「ちょっとおしっこ」
田中のばあさん「迷わないでね」
篠原のじいさん「便所はどこや」
田中のばあさん「あっちですよ」
篠原のじいさん「ちゃんと帰ってこれるかなあ」
アニマルボイスのじいさん「たよんないことゆうとるでねゃあて。ここに縄があるもんで狸のじいさんの腰にゆわえてその先を持って便所にいたらええもんで。帰りは縄をつたって戻ってくれば迷子になることはねゃあて」
ワイルドのじいさん「アニマルのじいさんは頭がええていかんわ。そうじゃそうじゃ。縄を狸のじいさんにくくって……と。この先を持って便所に行きゃあせ」
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このじいさん、無事に便所で用を足したんですが、何を思ったか縄を自分のほうに手繰り寄せまして……。
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岡本のじいさん「おいおい、地震かよ。地面が動くぜ」
田中のばあさん「あら、こわい。逃げなきゃ」
安田のじいさん「ちょっと待て!狸のじいさんが引っ張られとる!」
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ずるずると狸の毛氈が引っ張られ、便所の前へとやってまいります。
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岡本のじいさん「おいおい!これじゃ花見じゃなくて便所見じゃねえか。何やってんだ!」
田中のばあさん「まあいいじゃないかい。便所を見ながらお茶を飲むのも風情があって」いいじゃないかい」
安田のじいさん「どこが風情あんねん」
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田中のばあさん「あらあら、そんなことより、近々、和楽苑でいいことがありますよ」
安田のじいさん「なんでそんなことがわかるねん」
田中のばあさん「見てごらん。盃に茶ばしらが立ってる」