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入管法改正案廃案に思う
今後の展望
入管法改正案が事実上の廃案となりました。今回の改正案の最大の問題は難民申請3度目の人を強制送還できることです。本来は国際法の強行規範であるノン・ルフ―ルマンの原則(難民を危険な地域に送り返してはならないこと)に従い、難民であると主張する者を強制送還してはならないのです。今回の改正案の一番の問題はここにあります。
そして庇護すべき難民の基準を明確にすべきです。クルド難民やロヒンギャ難民は明らかに難民ですので、日本国が責任をもって庇護すべきです。難民には難民条約で定められた条約難民(狭義の難民)と紛争なども含めた広義の難民があるわけですが、広義の難民も含めて難民認定を積極的にしていくことです。そうでなければ日本は人権無視の国との誹りを免れません。
在留特別許可を申請制にし、家族関係を考慮することはいいことですが、現状、日本人の配偶者や子どものいる人のみが優遇されています。外国人のみの家庭に対しても配慮が必要です。在留特別許可のガイドラインも改めるつもりだったと思われますが、どう改めるか明らかにしませんでした。国際的に受け入れられるガイドラインを新たにつくるべきです。
仮放免に代わり監護措置制度(収容施設の外で監理者の監理のもと生活する制度)を設立することの問題点は、逃亡などがあった場合、監理者も処罰されることです。こんなことで誰が管理者になるでしょう。コロナ禍で密集を避けるため仮放免を積極的に認めているのが現状ですが、この制度になると密集は減りません。それとも仮放免と監理措置制度を併用するのでしょうか。その基準はどこにあるのでしょう。また、仮放免を進めながら仮放免すべき人を仮放免させず、そのまま殺してしまうとはどういうことでしょう。
入管収容施設内部で行われていることを全て開示すべきです。今回亡くなられたスリランカ人女性はビデオ監視の部屋に入れられていたのですから、録画を開示すべきです。虐待がなく、適切な処置がされていたなら、拒む理由はないと思います。そして医師の意見を聞くこと。医師に診せることも嫌がる入管ですが、施設外の病院に連れて行くべきです。塀の中で診察が行われ、カルテが改竄されることはあってはなりません。
こういったことがマスコミで大きく取り上げられ、多くの業界から反対の声が上がったことはいいことです。そういった声が改正案を廃案に持ち込んだんだと思います。まず大事なことは国民的議論であり、それなしに法案を通してしまおうというのは乱暴すぎます。難民の長期収容に対して国際社会から批判されているから改正を急ぐのでしょうが、国連高等難民弁務官事務所(UNHCR)などは、難民認定率を上げて長期収容を改めろと言っているのです。今回、国がやろうとしたことは強引な強制送還であり、批判はさらに強くなるでしょう。