五代目米團治独演会(銀座ブロッサム2025.1.25)

米團治の上方落語を銀座で


 

2025年1月25日(土)に銀座ブロッサム中央会館で「噺小屋新春スペシャル桂米團治独演会」が催され、妻と行って来ました。米團治師は年に2回、銀座で独演会を開いており、私と妻は欠かさず聴きに行っております。

 

午後1時開演なのですが、会場に到着したのは10分前で。1Fの後ろから2番目、一番下手の席でした。演目と演者は以下のとおりであり解説します。

 

『寄合酒』 桂弥っこ

この演目は三代目桂春團治の十八番として有名です。金のない若い者が寄って何とかして酒が飲みたい。持ち寄り散財にしようとなるのですが、みんな盗んできたものばかり。最後は乾物屋の子どもが遊び相手がいなくて困ってるというんでだまして鰹節を2本持ってこさせる。額に鰹節をあて鬼の格好をして「ぼんぼんかもか」「おっちゃんこわい」。それだけの話。弥っこさんは桂吉弥師のお弟子さん。

 

『二階借り』 桂米團治

いわゆる「バレネタ」です。お父さんの三代目桂米朝が得意としました。バレネタというのは男女の情愛を描いた下ネタで、TPOをわきまえないと出来ません。それを米團治師はいつだったかの正月の昼間にたしかNHKでやった。司会者が「正月の昼間にやるネタじゃない」とかって。昔、上方には「盆屋」というものがあり、一階が受付になってて二階に部屋がいくつもある。今でいうラブホテル。盆屋へ行くのに財布を忘れた男が女の家の二階でことをいたそうという魂胆。夫は茶漬けを食っている。終わって出ていく二人。そこへ妻(同じ女)が帰ってきて夫から「こうこうこうで」と経緯を聞く。「まあ、そんなマヌケな男、今頃、どこで何してるのかしら」「大方、家で茶漬けでも食ってるんだろう」というのがオチ。私が不思議なのは男女がことを終わらし下りてくるまでの間、まだ茶漬けを食ってるという不自然さ。

 

『ちりとてちん』 桂慶治朗

2007年度後期NHK「朝の連続テレビ小説」に同名のドラマがあります。そこに桂吉弥師も出演されており強く記憶に残っていますが、あのドラマがなぜ『ちりとてちん』なのかは覚えておりません。豆腐が腐ったのでそれに調味料をかけ、混ぜて知ったかぶりばかりする男に「長崎名産ちりとてちん」だと言って食わそうという話。やせ我慢して臭いのに「うまいうまい」と食う男の演技が見もの。「どんな味がする」と聞かれて「豆腐が腐ったような味だ」。

 

『本能寺』 桂米團治

芝居噺。歌舞伎は今でもそうですが庶民に人気だけど高くてなかなか観に行けませんでした。そこで安い寄席でその真似事を見ようというので芝居噺が多く作られました。芝居好きが高じて失敗する話が多いのですが、本作はただ芝居の雰囲気を味わってもらおうというもの。オチは芝居見物に来ていたお婆さんが夢中になり、紙袋から大量のイナゴが飛び出すというもの。ここで役者が「なんで今日はこないイナゴがおるんじゃ」「大方、前の客が青田であろう」なんだけど、まず「青田買い」という言葉の成り立ちを知らないと理解できません。今日では企業などが卒業前の学生と雇用契約を結ぶことですが、もともとは芝居用語で、金を払わずに芝居見物にくる客のことです。つまり新聞社とか。そこから何故、今の意味に転じたのかは不勉強なためわかりません。

 

中入

 

『代書』 桂米團治

四代目桂米團治作の比較的新しい古典落語。舞台は昭和初期。四代目は五代目の実父である三代目米朝の師匠。本名・中濱賢三。大阪市東成区で中濱代書事務所を経営していました。我々行政書士のご先祖様であり、その経験をもとに本作を書きました。通常は「履歴書」のくだりで終わるのですが、師はそこから朝鮮人渡航証明もやられました。ここは「朝鮮人差別だ」というわけのわからない批判から長らくやり手がなかったのですが、「ちゃんと聴いたら差別でないことがわかる」と桂米二師が本に書き、四代目桂文我師が実践することにより復活しました。また、日本人とドイツ人のハーフの宣教師が出てくるところは、おそらく米團治師の創作だと思います。オチは「自署不能につき代書す」なんですが、よくできた落語であり、是非、生で聴いてほしいと思います。

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